KDSG 秋・冬の事例相談会の報告者を募集しています。奮ってお申し込みください
私たちは、京都の LD 特に読み書きに障害をもつ発達性ディスレクシアに関心を抱く様々な職種、様々な見解を持つ人たちに研究交流の場を提供し、発達性ディスレクシアについての情報交換・啓発活動を行うとともに、発達性ディスレクシア児・者の支援に寄与する 活動を行います。
2020年10月より、京都府乙訓地域で6回の読み書き障害の事例研を実施してきました。読み書き障害については、教育界でも20年以上も前からその支援の必要性が言われながら、なかなか支援が行き渡りません。その原因の一つに、行動の問題ならば周囲の関係者と直接の利害が生じやすいですが、学習の問題は他者との関係で、利害関係が生じにくいからです。簡単に言えば、他者は困らないからです。しかも、当事者ですら、自分が勉強できないのは自分のせいだと思っているからです。
そんな中でも通級教室担当教員を中心に読み書き障害は地道に支援が続けられてきました。しかし、支援している割には成果が上がりにくいことも読み書き支援の発展を妨げています。これは通級で支援できる回数が、週1回と極端に少ないことが原因です。読み書き障害への支援は毎日少しづつ積み上げることが求められます。また、この障害とは他の発達障害が合併しやすく、子どもによってはオーダーメイドの支援が必要となるからです。
こうした問題を、個々のケースに応じて地域福祉から量的にカバーすることも重要ですが、軽度まで入れると約1割と言われる発達性読み書き障害の問題は根本的には解決しません。そこで、学校関係者だけでなくこの問題に関心を持たれる支援者全ての結節点としてこの研究会は立ち上げられました。多くの関係者の皆さんの情報を集約し、最新の情報を関係者に流通させることで発達性読み書き障害への社会的支援の一助になればと思います。
会員募集
本会は,3年目を迎えました。新会員も少しずつ増え,『発達性ディスレクシア(以下 DD と略します)』への関心と理解が徐々に進んできています。
本会では精度の高いアセスメントを目指し,
・独自の『STRAW-R』(標準読み書きスクリーニング検査) 講習会
・個別の検査結果の読み取りや, 「AVLT」や「レイの複雑図形」の実施方法等
個別支援についての相談会や実践交流会を開催し,内容も充実しつつあります。DD は学習障害の中核と言われており,多くは『音韻障害』と『流暢性』の障害だと考えられています。にもかかわらず,教育や支援の現場では今なお
文章が読めない→「音読練習」
字が書けない,漢字が覚えられない→「漢字練習」
これを何度も繰り返すエビデンスの無い支援が散見されます。これは効果が見られないばかりか苦手意識や失敗感を蓄積させ就学初期から学習性無力感を引き起こす結果にもつながります。
例えば,DD 児の「勝手読み」という表現は,この表現自体が,子どもたちの「何とか文章を読みたい,読まなければ・・・。」という思いがくみ取れていない大人目線の心無い表現だと,私達は感じます。この「勝手読み」表現の視点は,失敗を指摘して何度も読み直しをさせる「指導」につながりやすく,子どもたちを救うどころか「読みたい」という意欲の芽を摘んでしまいかねません。私たちはこの場合,「読みのメカニズム(認知構造)」に重きを置いて,文章を読むという出力に着目するより,50 音を基礎とする入力から支援するべきだと考えています。
「京都発達性ディスレクシア学習会(KDSG)」は,研修会で学び,実践をしたいと思っている,又は実践をしつつもこれでよいのだろうかと悩む方々と一緒に不安や疑問を共有し解決していく会を目指しています。DD を抱える₍長期聴覚記憶に問題のない)人たちには,就学早期から「聴覚法(バイパス法)」を使っての指導が有効です。
我々「京都発達性ディスレクシア学習会₍KDSG)」は
「今や,発達性ディスレクシア₍DD)を知らずして学習障害支援の実践はあり得ない」
を,スローガンに今日まで歩んできました。
私たちと一緒に「発達性ディスレクシア」を学び合う仲間となって下さる方をお待ちしています。
2024 年 京都発達性ディスレクシア学習会
会長 山川 秀一
会員一同
KDSG 2025春の講演会
講 演:河野俊寛氏(東京農工大学 客員教授 )
演題:「読み書きに困難さを抱える子どもの理解
~ICT を用いた読み書き支援の実際~」
※参加者からの声を抜粋します。
1. 全体的な学びと満足度
低次・高次の読み書きの説明が明確で理解が深まった
読み書き困難の児童を適切に見立てるために、低次の読み書きと高次の読み書きの区別が重要だと感じた。
河野先生のテストバッテリー、指導例、合理的配慮の具体的説明が役立った
実際の支援にすぐ活かせる具体的な方法が示され、支援の手順を整理しやすくなった。
眼球運動の映像を通じて読字困難の原因が理解できた
読字時の眼球運動の映像を見て、読字の自動化がされにくい理由が明確になった。
学習困難を整理しやすくする「低次・高次」の分類が有用だった
学習のつまずきを低次・高次の視点で分けることで、児童の特性を理解しやすくなった。
2. もっと知りたかったこと
漢字の複数の読みの習得方法を詳しく知りたい
キーボード入力時の漢字の活用法や、児童が読みを学ぶ際の工夫を知りたかった。
学校現場でどのように活用できるのか、具体例が欲しかった。
合理的配慮の具体的な事例や支援方法についてさらに詳しく学びたかった
児童に適した配慮の進め方や、保護者との調整方法について知りたかった。
3. 支援の重要性
• 学習の継続を支援することが重要であると認識できた
読み書きの困難があっても、学習についていけるようにする支援が必要だと感じた。
高学年児童への支援は補助・代替の手段の習得を促すことが重要
低学年では基本スキルの支援を行うが、高学年では学習を進めるための補助的なスキルを習得させるべきだと理解した。
ICT の活用を推進したいが、学校のタブレットにアプリを入れるのが難しい
申請手続きが複雑で、簡単に活用できる環境を整えるのが難しいと感じている。
低次・高次の困難を適切にアセスメントし、支援を考えることが必要
読み書き困難の児童がどの段階でつまずいているのかを評価し、適切な支援を行う重要性を再認識した。
4. 合理的配慮の必要性
• 合理的配慮の考え方を改めて学ぶことができた
支援を行う際に、「特別な支援」ではなく「学習の機会を保証するもの」として合理的配慮を捉えるべきだと感じた。
特別支援学級から通常学級へ戻る際の支援が重要
児童が適応できるよう支援方法を柔軟に考える必要がある。
• 保護者が読み上げを拒否する場合、児童が求めたときにどう対応すべきか悩む
保護者の意向と児童の学習ニーズのバランスをどうとるべきか検討が必要。
低学年担任が早期に気付き、支援につなげる役割を担う重要性を感じた
低学年のうちに適切なアセスメントを行い、支援につなぐことの大切さを認識した。
5. 教育現場の課題
教育の合理的配慮を進めるには、より多くの教員の理解が必要
ディスレクシア・ディスグラフィアの生徒の評価基準が学校ごとに異なっており、統一した対応が求められる。
教育現場の合理的配慮は進んでいるが、入試などでは公平性・平等性を理由に支援が進みにくい
一部の地域では PC での受験が可能な事例もあるが、地域ごとの差が大きい。
高校では合理的配慮を進めるために研修や論議を重ねている
具体的に、漢字指定の解答をかな解答で正答と認めるなどの対応を決定するのに長い時間を要した。
教育委員会や校長会で、読み書き困難への支援の必要性をもっと広めたい
指導者が適切な支援を提供できるよう、講演や研修の場を増やしてほしい。
多くのご意見をいただき、ありがとうございました。河野先生の言われる読み書きの低次の学習についての支援が指導や合理的配慮の対象になるという話が分かりやすいという声が多かったです。